超辛口で知られる高山正之氏の、先週の「週刊新潮」のコラム「変見自在」は、『やっぱりそうだったのか』と妙に納得した。
それと同時に、21世紀になっても司法の世界では、まだ男尊女卑とまでは言わないが、女性差別や女性に対するステレオタイプな見方が払拭されていないのだと思った。
コラムのタイトルは「女の地獄」で、同じような罪を犯しても、男女の差によって量刑の違いがあるというものである。
裁判には、裁判官の作った相場があって、「一人殺すと懲役10年前後で、裁判官は判決を、その7掛けにするのが基本相場」で、惨い殺し方か同情すべき点があるかで5%の増減をつけて判決を作るという。

不倫をなじられ妻をナイフで刺殺した夫は懲役7年、金の恨みから妻を鉄棒で殴り、半死にしてから灯油をかけて焼き殺した夫は、求刑15年の7掛けに惨さを5%プラスして懲役11年。
愛人を同居させ、日頃から妻に対して暴力を振るっていた夫が、妻をいたぶり、ついに殴り殺して、愛人に手伝わせて遺体をバラバラにした罪は、殺人の相場7年とバラバラにした3年で、日頃の暴力は不問にされて懲役10年だという。
遺体をバラバラにするというのは3年という相場だそうだ。
最近の事件で、お台場のマンションで同居の外国人女性を殺して、洗濯機で血抜きをした犯人がいた。
この変質殺人鬼は8年前にも同じ罪を犯したが、裁判で殺人の状況証拠は却下され、バラバラにした罪の3年と殺人は間違いないだろうということがプラスされて懲役3年6ヶ月だったという。
そして、また同じ罪を犯している。
前の事件で判決を確定した裁判官は、再犯の重大性を認識して、被害者や遺族、社会に対して謝罪しろと言いたい。

女たちは、生きている間は夫の不倫に悩まされ、暴力にさらされ、男の身勝手な理由で、挙句は惨い殺され方をしても、殺した男たちは、同じ男の裁判官によって刑を軽く済ませている。
同じような事件を起こしても、渋谷で夫を殺し遺体をバラバラにした妻と、同じ渋谷で妹を殺してバラバラにした兄に対して、裁判で下された量刑が倍以上も違った。
妻の場合、「夫からの絶え間ない暴力にさらされ、一時的な心神喪失の状態にあった」という検察、弁護側双方の鑑定結果が出ていて、「米国では判例として確定している『殴られる妻症候群』と同じ内容」であったが、裁判長は「職権でその鑑定をボツにして懲役15年にした」という。
兄の方は、懲役17年の求刑に対して、殺人は相場の7年、バラバラについては、「15にも切り分けた獰猛さはまるで別人」という鑑定結果採用して0、判決は妻の場合の半分の懲役7年である。
日頃から暴力を振るわれて鼻の骨まで折っている「殴られる妻症候群」の妻と、自分の進路を非難されて妹を殺した兄の量刑が倍以上も違うという、こんな不公平で理不尽な判決があってよいのだろうか。
また、96歳の母が知的障害の息子の先行きを思って道連れに心中したが、息子だけが死んで母は殺人罪に問われた。
その母を1年間拘留して、実刑3年の判決を出すという無慈悲な裁判官もいたという。
女は良妻賢母のステレオタイプに合わず、それから外れた者は厳罰に処すというわけか。
また、今日も夫の暴力で入院していた妻が、夫を殺すか自分が殺されるかの二者択一を迫られ、夫に渡された拳銃で夫を射殺した。
裁判官は、この妻に対してどのような量刑を科すのだろうか。

理不尽な男に殺されても、自分が罪を犯しても、今の日本は女の地獄が続いている。